三菱重工 久村信政さんの話を聞いた。

【テーマ】軍需生産の実態は
【話し手】全造船機械三菱重工支部 久村信政さん
【場所】名古屋YWCA4階
【時間】13:30〜16:00

●軍事企業で働く社員の方から、反戦の立場の話が聞くことができてとても貴重な体験でした。以下、講演前に見せていただいたDVD及び久村さんのお話から印象に残った点を箇条書きにします。


防衛省との取引金額(確か2002年)
1位:三菱重工、2位:川崎重工、3位:三菱電機、6位:NEC


・戦争するための兵器づくり
三菱重工などの企業は、防衛のために兵器を造っていたが、→しだいに海外派兵のための兵器をつくるようになった(空中給油機など)


・会社による組合潰し
戦後、三菱重工の社員は、「もう戦争に加担したくない」という思いから反戦を掲げて組合を作った。→しかし会社は、こうした組合を潰しにかかった。例えば、会社の労務担当者が公安警察と一体となって身辺調査をする。(交友関係、金銭状況、犯罪関係など21項)→こうしてブラックリストが作成される。

公安警察が昼に家に来で奥さんと話す→だんなが仕事を終えて家に帰ると→奥さんが「あんた、そんな活動は止めて、止めないと離婚よ!」と言われる→だんなは、離婚を取るか・組合での平和活動を取るかの選択を迫られる→仕方なく平和活動を止めていった仲間が沢山いた。


・社員に対する思想差別
会社にとって都合の悪い社員は、管理職にさせないなどの差別。仮に社員本人は大丈夫でも、例えば社員の息子が共産党であれば、社員が差別を受ける。


自衛隊だけでは、戦争できない。
武器を造るのは「民間人」。よって民間人の協力がなければ戦争はできない。民間人も戦争に加担させられる。


・戦地へ民間人を派遣
イラク戦争のときに問題となったが、自衛隊では兵器の修理ができないので、兵器を造った企業の社員が戦地に派遣された。しかし、その社員は家族に対しても、「どこに出張するのか」について話すことが禁じられた。なぜなら軍事情報に関する包括的保全協定(GSOMIA)によって軍事機密とされていたから。
もし、その社員が現地で拘束されたり、負傷したとしたら、誰が責任を取るのか?防衛省からの指示だからと会社は言うだろう。そうだとすれば労災になるのか?国が責任と取ってくれるのか?非常にあいまいだ。

→もし、社員が海外出張を断ったらどうなるか?
上司から「お前が行かないから、他の者を行かせるが、それでいいのか?」と半分脅しのように言われる。出張命令に従わざるを得ない。それでも断った場合、その後は職場で差別される。


三菱重工の兵器には事故が多い
会社にとって都合の悪い思想を持っている人たちは、ひとつにまとめられて職場で働いている。こうした職場の分断があっては、良いものづくりは、できないのではないか。さらに防衛省とのつながりの強い三菱重工は実質的に独占企業だから企業間の競争が無い。よって切磋琢磨して品質を向上させようという意識が薄いのではないか。


・今後の課題
職場に憲法を根付かせる。平和産業への転換=「平和企業宣言」への取り組みなどにより、平和の砦を築く。


◆久村さんの話を聞いた感想
軍需産業企業は、憲法が機能していない特殊な社会だと感じました。憲法13条で保障されてる個人の尊厳や、憲法19条で保障されている思想・良心の自由などが尊重されていない。会社の言い分としては、「兵器を造るのが嫌なら三菱重工に入社しなければ良いし、退職して別の会社に転職すれば良い」と考えているかもしれません。もちろん憲法は国家権力を規制するものであり、企業には直接適用されるものではないです。しかし大企業ともなれば、社会的実在として大きな影響を与える存在なのであるから、国家と同様に憲法を遵守すべきだと思います。
防衛省は、イージス艦については、三菱重工だけにしか発注しないそうです。競争入札はしないのだろうか?
・久村さんは、ブラックリストに掲載されているため、今日の講演についても監視されているのでしょう。
・何千億円/年もの税金が投入されている兵器の性能は、100%大丈夫とはいえないらしい。そうだとすれば、そのような兵器に大金をいくらつぎ込んでも、日本の安全は確保できない。ならば、そのお金を海外支援、東北の被災地支援、子どもやお年寄りの福祉などに使ったほうが、より平和構築につながるのではないかと思いました。