原発差し止め判決を下した 元裁判官 井戸さんの言葉

本日6/2(木)の朝日新聞朝刊の13面に元裁判官 井戸謙一さんのインタビューを読んで胸が熱くなりました。それは井戸さんがとても勇気ある行動をされてきたからです。

<井戸さんの判決>
・石川県にある志賀(しか)原発2号機の運転差し止めを求めて、住民ら原告が、北陸電力を被告として金沢地裁に提訴。
→2006年 井戸さんは判決で原発の運転差し止めを認めました。これは稼働中の原発では唯一の事例だそうです。
→しかし、高裁では原告が逆転敗訴。→2010年最高裁で原告敗訴が確定。


司法権の独立という建前>
・わたしたちの人権を保障するために、裁判は公正に行われなければなりません。そのために司法権は、立法権や行政権から独立していなければならないのです。また裁判を担当する裁判官が、外部からの圧力や干渉を受けずに、その良心に従い独立して職権を行使する必要があります。(憲法76条3号)
・そして裁判官が、独立して職権を行使できるように身分が保障されています。例えば、一定の事項に該当しなければ、辞めさせられることはないし(78条1項)、在任中は相当の報酬をもらえ、減額されることはないのです(79条6項、80条2項)。
・しかし、こうした保障があるにもかかわらず、実際は、裁判官は良心に従って判決を下していない場合もあるようです。例えば、住民の勝ちであるような案件であっても、住民→勝訴、企業or政府→敗訴という判決を下すと、経済的な影響や、他の地区で訴訟が起きるなど与える影響がとても大きい。だから企業や政府を勝たせる判決を下してしまう傾向にあるのではないでしょうか。


<井戸さんの勇気>
・こうしたなかで、井戸さんは、良心に従って判決を下されました。その時の心境を語った言葉にすごいパワーを感じました。
「最後は、結論はこれしかないとの確信があったので気持ちは落ち着いていました。いくら世論と乖離していても、少数者の言い分にすぎなくても、主張に合理性があると思ったら認めなければいけません。原告が主張するような事故が起き、被曝という具体的な危険があるかどうか。その主張を判断するだけです。
「被告である電力会社の背後に原発を推進する国がいる、という構造は意識しますけど、判決には何ら影響を与えません。結論として原告の主張が認められるとすれば、国策に反していても原告勝訴とする。それが裁判官の仕事です。

・こうした判決も、淡々と下されたわけではありません。井戸さんはかなりのプレッシャーを感じられたようです。言い渡した後の反響を考えると、真冬なのに体中から汗が噴き出して、眠れなくなったこともあるそうです。「裁判官の職権の独立」と「身分の保障」憲法で規定されているのに、良心に従って判決を下すことが、こんなに大変なことなのかとつくづく思いました。井戸さんの勇気ある職権の行使に敬意を表します。


●現職の裁判官の方々や、これから裁判官になる人たちには、判決を下すにあたって、憲法を学んだ頃の初心を忘れないでいて欲しいと思います。