●小川和久さんの話を聞いた

  第31回 愛銀文化講演会
  『日本は国境を守れるか』

  2012年5月9日(水) 18:00〜19:30
  中京大学文化市民会館 プルニエホール


 テレビのコメンテーターとして、よく登場される小川さんですが、講演を聞くのは初めて。「国際政治・軍事アナリスト」という肩書きのとおり、政治面・軍事面の両面からお話し下さいました。講演内容は、日本の安全保障について、北朝鮮・中国・アメリから展望するというお話でした。



1.変化する北朝鮮
北朝鮮は軍事力ではアメリカにとうてい敵わないことを自覚している。そこで「非対称型軍事力」という方針を取ってきた。すなわち、ある分野の軍事力を突出させる方針。具体的には2つの分野を突出させた。
 一つは「核兵器弾道ミサイル」。これを使って、アメリカとサシで交渉しようとして、「今の北朝鮮の体制を保障する。と一筆書いてくれ」とアメリカに要求した。アメリカは拒んだ。
 もう一つは「世界最大の特殊部隊」。約20万人いるといわれる日本の陸上自衛隊員は14.1万人しかいない。同じ朝鮮民族だから韓国人に化けることは容易。


北朝鮮はタフである。半島という攻められやすい地形であるから、頭を使った外交をして生き延びている。韓国との小競り合いを起こす場合でも、中国やロシアが「まあ、それは仕方ないか...」と言ってくれるような場所でしか起こさない。
 たとえば、2010年11月の延坪島ヨンピョンド)砲撃事件。このあたりは、北朝鮮と韓国のお互いが主張する海域に食い違いが生じている地域であるし、北朝鮮は昭和48年から「主張する線より北に来た場合は、砲撃する」と、ずっと主張してきた。



2.「洗練」されていく中国
・2003年に中国は「三戦」を導入。三戦とは、「世論戦」「心理戦」「法律戦」をいう。戦わずして勝つという発想。
 世論戦・・・世界各地にPKOを派遣している。国際イメージアップ
 心理戦・・・相手がビビるようなことをする。
 法律戦・・・国際法を研究して国内法(国境法など)を整備した。


・日本と中国には「トラック2(制服間交流)」というパイプがある。これはお互い戦争をしないためのもの。


・中国のステルス戦闘機には、4つのフィンが付いていた。レーダーに発見されやすいし、エンジンの出力が弱いことを表わしている。しかし、その後フィンが2つになった。中国は着々と進化している。



3.米国の深謀遠慮
・米軍の施設は、日本に84ヶ所ある。自衛隊との共同施設も含めると134ヶ所ある。このことは知らない人が多い。日本が負担する在日米軍経費は、7,000億円を超えている(共産党調べ)。この中に思いやり予算約1,800億円が含まれている。
 日米安保を解消されるのをアメリカは恐れている。ハワイからケープタウンの海域(地球の約半分)を行動する米軍を日本が支えている。これだけの負担をしている日本は国益を得られているのか?



4.日本は海洋国家を自覚し、国益を追求すべし
・日本の領土は狭いが、海を加えると「海洋資源大国」となる。


・難破船などの方法によって尖閣を他国に実効支配されてしまいかねない。国境法を制定して自衛隊を配備するべき。そして国例世論に訴えかける。これによって中国の「世論戦」をひっくり返すべき。
 自衛隊単独の配備が難しいなら、米軍との共同訓練などを時間をかけてやっていく。そして、次のステップとして「人質作戦」をしてはどうか。たとえばスウェーデンの研究機関を尖閣諸島に作るなど。




●小川さんの話を聞いて印象的だったのは、北朝鮮・中国・アメリカどの国も積極的に戦争をしたいとは考えておらず、軍事力を増強するのは、あくまで外交手段の一つとして考えているということでした。相手国の外交・軍事戦略をきちんと理解して、それに冷静に対処していくことが大切だと思います。
 

 しかし、小川さんは、「日本人は危機管理が苦手な民族である。」「日本の外務省は、各国の考えている外交・軍事戦略をきちんと理解していない」とも言われました。これでは国益を損うばかりだと思います。


 あるとき、外務省のお役人と会食をするためにお小川さんは、車を運転していった。運転席から出てきた小川さんに向かって外務省のお役人がこんなことを言ったそうです。「いつも小川先生には外務省の外交を批判されてばかりですが、ワインについてはおまかせ下さい。2,000本の最高級ワインを取りそろえております」
 車を運転してきた人にお酒を勧めるのは、非常識な行動であるし、そもそも小川さんは、お酒が飲めないそうです。こんなこともリサーチできないようでは、ハードな外交交渉なんて、きっとできないでしょう。外務省のお役人って、真剣に仕事をされているのでしょうか? 国民はなめられているのかもしれません。なめられないように外交・軍事に関心を持って、もっと勉強しようと思います。


●90分が、あっという間でした。初めて聞く話も多かったです。中国の「三戦」など、もう少し詳しく知りたい点がいくつかありましたので小川さんの著著を読んで補完したいと思います。