●新聞の力

 今日で東日本大震災から1年が経ちました。
 朝、毎日新聞朝日新聞・読売新聞をコンビニで購入して、じっくりと読みました。先日テレビが壊れたおかげで、静かに集中して読むことができました。

 各紙ともに、被災された方々の悲しみ、苦しみ、希望などをとてもリアルに伝えてくれています。記事を読み進めていくと、「自分もしっかりと生きていこう!」と勇気が沸いてきます。自然に涙も流れてきます。

 
 テレビでもいろいろな映像が流れましたが、すぐに次の場面に切り替わってしまい、心に刻みつける余裕があまりないです。
 一方、新聞の場合は、自分のペースで写真をじっくり見て、活字を何度も読み返すことができます。このようにして、1年前の出来事を忘れないために、しっかりと自分の心に刻みつけることができました。
 今日は、改めて新聞の力を感じました。各紙について、素晴らしいと感じた点を書きたいと思います。
 

1.読売新聞
 1面に大きな写真が掲載されています。これは雪の降る中、慰霊塔(仙台市若林区荒浜)で静かに祈る人の写真です。


 写真上部には、編集手帳というコラムが書かれています。普段のコラムよりも分量が多く、読み応えがあります。印象的な文章を引用してみます。

津波に肉親を奪われ、放射能に故郷を追われた人にとって、震災が思い出に変わることは金輪際あり得ない。

死者・不明者は約2万人・・・と書きかけて、ためらう。命に「約」や端数があるはずもない。

口にするのも文字にするのも滅入る言葉がある。「絆」である。

雪下ろしをしないと屋根がもたないように、降り積もった時間の“時降ろし”しなければ日本という国がもたない。

 など、とても印象的な文章が書かれています。


 また、行方不明の母へ、<ままへ。いきてるといいね おげんきですか> と手紙を書いた昆 愛海(こん まなみ)ちゃんについても書かれています。彼女は6歳になるそうです。

漢字を学び、自分の名前の中で「母」が見守ってくれていることに気づく日も遠くないだろう

 と、一人の個人に焦点を当てることもされています。
 このコラムを書いた記者さんの強い思いがひしひしと感じられます。



 さらに、22面〜24面、39面にわたって、「戻らぬあなたへ」というテーマで、たくさんの(77家族分)写真が掲載されています。


 これは震災で亡くなった人や行方がわからない人の写真や思い出の品々を、家族や知人から借りて、メッセージを語ってもらったものです。それぞれのメッセージにたくさんの思いが込められていて、感情移入しました。
 これまでの新聞報道では、生き残った側の人たちの写真が掲載されることが多かったのですが、今回は亡くなった人や行方がわからない人の写真が掲載されて、より具体的に震災の被害のイメージが沸きました。とてもよい方法だと思います。



2.朝日新聞
 朝日新聞でも、被災された方々の思いがたくさん紹介されていました。 
 しかし、すごいなと思ったのは、別冊の8ページ特集です。。
 見開きで、東北の絵が描かれています。津波の脅威がどのくらいのものであったか、分かるようになっています。別の見開きは、海上から福島第一原発周辺を映した写真です。建物や道路は、ちゃんとあるのに、目に見えない放射能によって人が住めなくなっている町の様子が分かります。



 さらにもう一つの見開きでは、福島第一、第二、女川、東海第二の4つの原発について「地震発生し、津波が到達してどうなったのか」がビジュアルで描かれています。これは、とてもわかりやすいです。これまでバラバラに報道されて、断片的に得ていた情報が統一的に整理されました。



3.毎日新聞
 他紙に比べてカラー紙面が少ない毎日新聞。広告も含めて、いつも7〜8ページくらい。今日も7ページでした。その貴重なカラーページでインパクトのある写真を掲載してくれました。
 右上の女性は、父と夫が津波で流され、子供はいなかったので独りになってしまったそうです。更地になった自宅跡で涙を流している姿に、胸を打たれました。この女性の悲しみがとても表現されている写真だと思います。


 また、今日の毎日新聞では、「ふるさとに したいこと」というテーマで、見開きの左端と右端に子供たちの言葉が掲載されていました。(2、3、6、7、8、19、20、21、24、25、26、27面に12人分)
 できる限り、子供が話した言葉を使って書かれていますので、子供の気持ちがストレートに伝わってきます。「ヘリを操縦して人を助けたい」「今すぐにでも知事になりたい」「家族で集まれる家を建てる」などなど希望でいっぱいです。
 普段は、スポーツ面は読まずにさらりとすぐにめくってしまうのですが、ここにも左端と右端に子供たちの言葉が記載されていたので今日はめくらずに読みました。11歳の野球少年は、「将来はプロ野球選手になって、お金をもらって、石巻に寄付したい。」そうです。



●3つの新聞を読み、各社ともに多くの人々に精力的な取材をしていることがよくわかりました。そのおかげで、被災された方々が未来に向かって力強く生きていることがよくわかりました。
 しかし、その一方で、あまりに衝撃すぎて記事にできなかった内容もあったのではないかと想像します。また、自分のことで精一杯で、取材に応じている余裕の無い人や、取材に応じたいけれども、精神的に話すことができない人なども、今でも沢山いらっしゃるのだと思います。
「新聞記事になっていないもっと厳しい現実も、相当数あるのではないか?」 と考えさせられる一日でした。
 

 震災による悲しみを抱えている人たちや、苦しんでいる人たちが、一日も早く平穏に暮らせる日が来ることを祈っております。