藤本幸久監督の話を聞いた その2

一昨日、名古屋国際センター 3階研修室にて藤本幸久監督の撮影された映像を交えてトークを聞いてきました。
・テーマは2つ
 (1)沖縄の最新映像・・・主に高江地区
 (2)福島原発震災の最新映像・・・京都大学 小出裕章助教授へのインタビュー


◆本日は、(2)についての感想を書きます。

小出裕章助教授の話>・・・インタビューDVDの一部を見せていただきました。
放射線は人体には有害。1mSvというのは、基準をひとまず決めただけであり、それ以下でも危険はある。だから「1mSv以下であれば安全です。」なんてことは言うべきでない。
・我々のように放射線関係の仕事に従事する者については、外部被曝の年間の許容限度が20mSvに引き上げられている。
ICRP(国際放射線防護委員会)の基準によれば、年間1mSvの外部被曝20,000人に1人がガンで死亡すると言っているが、ゴフマン博士の言う2,500人に1人という説を支持している。(8倍の違いあり)
→ 福島の子どもの外部被曝の限度を1mSv→20mSvにした場合、子どもは大人の4〜5倍の感受性があるので、2,500人(ゴフマン説)÷20÷(4〜5)=25人〜30人くらいに1人が、ガンで死亡するという計算になってしまう。
・かつての日本は、農業・漁業をつぶして、原子力を推進してきた。今その原子力が農業・漁業を壊している。だから農業・漁業を支えていく責任がある。すなわち、汚染された野菜や魚を廃棄するのではなく受け入れるべき。汚染の数値などすべての情報を開示した上で、大人が食べるしかないのではないか。
・福島の人は今、「被曝のおそれ」vs.「避難する経済的負担&故郷を離れたくない気持ち」というどちらも選択困難な状態になっている。このような選択できない状態に陥らないためには、「原発を止めるしかない」とチェルノブイリの時に思った。当時から原発を止めるように呼びかけてきたが、自分の力不足で原発を止めることはできなかった。


●福島産の野菜や魚は、食べないようにしよう。と私は考えていましたが、小出さんの「汚染された野菜や魚を大人が食べる」という言葉にはハッとさせられました。この部分を話されている時の小出さんは、とても苦渋の表情でした。農家の人、漁師さんなどの立場に立って考え、さらには日本の過去の政策、日本の今後の進むべき道のことまでも踏まえた上での発言だったと思います。学者というと自分の研究のことしか考えないというイメージでしたが、こんな視野を広げて考えることのできる学者さんもいるのかと感心させられました。



<藤本監督の話>
・5月に福島市郡山市いわき市などでDVD無料上映会をしたそうです。(上記の小出助教授のインタビューや今中哲ニ助教授のインタビューなど)
・上映会には、のべ2,000人集まった。主な参加者は、子どもを持つお母さんたち。
・上映会の後、お母さんたちは泣いていたそうです。政府やマスコミが報道しない話を聞いて→「やっぱりそうだったのか。」と。
・お母さんたちは、面識のない隣同士、話し始めたそうです。どんな話をしているのか?藤本監督がそばで聞いてみると、深く心配しているお母さんたちは、「孤立」しているようです。「心配しすぎのお母さん」と周りに見られて、浮いてしまっているようです。
・学校の現場でも似た状況にあるそうです。国の基準で大丈夫なのか?と心配する先生もいるのですが、「心配しすぎの先生」と周りに見られているようです。「国が、3.8μSv/hまで大丈夫と言ってるのだから、その基準内であれば心配する必要ない。」と考える教員が大多数のようです。
・藤本監督が福島に入った時、街でマスクをしているのは、100人に1人くらいで驚いたそうです。



●実際に福島に行かれた藤本監督のお話にはとても説得力がありました。福島では一部の人を除いて、多くの人たちは、あまり危機感がないことがわかりました。政府やマスコミの報道によって危機感を持たないように操作されているのかもしれません。
●しかし、放射線がどのくらい危険なのかは、学者の見解にも幅があります。上記のICRPの見解とゴフマン博士の見解でも8倍の開きがありますが、放射線については、まだまだ未知の部分の多いです。万一のことを考えて、一番厳しい基準で考えていくべきだと思います。
●そうすると、例えば今以上に福島の人たちを避難させたり、補償しなければならなくなるのでお金の問題が出てきます。「人の生存権」vs.「国家財政」という対立構図です。どちらも崩せない状況を生み出してしまった原因は、やはり原子力政策なのでしょう。