鎌仲ひとみ監督「ヒバクシャ 世界の終りに」を観た

内部被曝をして病気になった人や核施設の近くに暮らす人を取材したこの映画は、数年前から各地で上映されていたようです。私は最近この映画の存在を知り、5/7(土)名古屋市での上映会で初めて観ました。
映画のサイトです。 → http://www.g-gendai.co.jp/hibakusha/
(以下、映画の内容についての記述を含みます。まだ観ていない人はご注意ください。)






・この映画は、イラクアメリカ、長崎が舞台となっています。

1.イラク
湾岸戦争300トンもの劣化ウラン弾イラクに投下された。湾岸戦争後 → 白血病やガンの発生が4倍になった。
ラシャ(14歳少女)白血病で治療中であったが、経済制裁によって薬を手に入れることができずに亡くなる。
ムスタファ(少年)白血病100km離れた病院に通っている。やはり薬の不足によって計画通りの治療ができていない。
・ムスタファの父はチグリス川の引いて、畑を耕している。1日3〜4kgとれるオクラが生活の糧。
・畑での男性の言葉が印象的でした。「どうしてロシア、中国、日本は何もしてくれないんだ!」と


2.アメリカ ワシントン州ハンフォード核施設
プルトニウムを作っていた。核弾頭25,000発分。ここでの原料が長崎の原爆にも使用された。
・この施設の周辺の住民28世帯の家族は、甲状腺の異常などの被害にあった。その地域は「死の1マイル」と言われた。
・兄トム(56歳)もその一人。
りんご農園をやっている。幼いころに病気になり、手術をした。これまでアメリカ政府は情報を隠していたが、文書が公開され出して、1984年に自分が被曝していたことを初めて知る。
→そして、政府に対して訴訟を起こす。愛国心はあるのか!」と罵られ、銀行からは融資をストップされ、村八分にあった。→結局2003年請求は棄却されてしまった。

・弟テリー(52歳)
大きなじゃがいも農場をやっている。兄トムとは考え方が違う。放射能汚染はトム程は気にしていない。「たくさんじゃがいもを作って日本にも輸出する」と張り切っていた。マックでマックフライポテトを美味しそうに食べていたのが印象的でした。


・この核施設はすでに閉鎖となっている。しかし、200億リットルもの廃棄物の処理をしなければならない。
・浄化作業をしている人の話によれば、「地下水から汚染が広がっている→その汚染がいずれ川に達する→川の下流では、市が水道として利用している→市はいったいどうするつもりなのか?」と心配されていました。


3.長崎
・横山さん(62歳)
長崎の原爆により両親をガンで亡くし、妹も亡くなった。横山さんは爆心地から2km外であったので国は補償をしてくれない。今でも病院に通っている。

・池田さん(69歳)
長崎の原爆により毎日兄弟が亡くなっていった。目の見えない父、寝たきりの母を養うために働いた。10年後両親は亡くなり、本人も倒れた。被爆の体験は話したくなかったが、定年後話すようになった。


●この映画は2003年に完成したようですが、今の日本、世界にとってさらに意味のある映画になっていると感じました。登場人物たちの話を聞いて、内部被曝は、直ちに影響が出るものではなく、数年後〜数十年後に影響が現れるとても恐ろしいものだと思いました。