豊下楢彦さん 『安保条約の成立』 を読んだ。
この本の副題として、
―吉田外交と天皇外交―とあります。
「天皇外交」といっても、
そもそも日本国憲法第1条で、天皇は「象徴」なのだから、
外交のような「政治的行為」はできなかったはず。
それにもかかわらず、安保条約の交渉過程で、天皇が関与していたのか?
とても気になったので、読んでみることにしました。
著者によると、秘密とされた外交文書が少しずつ公開されたので、
その限られた範囲で「仮説」を立てられています。
その「仮説」とは、
天皇は、朝鮮の有事(朝鮮戦争)→日本の有事→天皇制の有事
となることに危機感をもっていたのではないか。
↓
だから、天皇は基地提供・米軍の駐留を希望していた。
↓
しかし、当時の首相吉田茂は、そうした危機感を抱いておらず、
軍事基地の提供・米軍の駐留など考えていなかった。
↓
そこで、天皇は基地提供・米軍の駐留の方向で交渉するように
吉田首相に「下命」したのではないか。
という説です。
これが本当のことであれば、象徴天皇制が機能していなかったことになります。
まだまだ公開されていない資料があるそうです。
「国家機密」といっても、「国民主権」「国民の知る権利」という観点から、
外務省には、早くこうした資料を公開してほしいものです。