高橋哲哉さん 『靖国問題』 を読んだ

先日、高橋哲哉さんのお話を聞いたので、
その著作である靖国問題を読みました。


靖国神社を支持する人と、支持しない人がいることは、知っていましたが、
この本を読んで、その対立内容がよくわかりました。

高橋さんは、資料などを冷静に分析して主張をされています。
なるほどと思った点につき箇条書きします。


●日本は、日清戦争日露戦争と勝利したものの、東アジア情勢は緊迫していた。
→国のために喜んで命を捧げてくれる兵士を調達し続けるために、
 戦士者とその遺族に最大の名誉を与えた
→これにより、遺族の感情は悲しみから喜びに変わる。
→さらに他の国民も、自ら進んで命を捧げるようになる。
→これは、「感情の錬金術」にほかならない。
→こうした感情の錬金術から逃れるためには、
 本当は悲しいのに、「嬉しい」と言わないことだ。


靖国神社には、日本軍兵士として動員された植民地出身の戦士者も合祀されている。
→台湾、朝鮮出身者だけでも約5万人いる。
→これらの人々は、植民地支配の被害者といえる
→しかし、加害者たる日本人兵士と同格の「護国の神」として合祀されている。
→これは台湾、朝鮮の遺族にとって、屈辱的でないはずはない。


小泉首相靖国参拝憲法違反だとして、全国で訴訟が提起された。
→多くの判決では、憲法判断を回避したり、違憲判断に消極的。
→しかし、福岡地裁は、明確に違憲判断を下した。
→裁判長は、右翼からの攻撃を予想して遺書を書いて判決に臨んだとされる。
→首相の靖国参拝に関して、「合憲」と認定して確定した判決はひとつもない。


●明治政府は、神道を国教化しようとしたが、仏教界などの反発で失敗。
→そこで、神社神道は「国家の祭祀」であり、「宗教」ではないとした。
→すなわち、「」と「宗教」を分離した。
→よって、どんな「宗教」の信者も、日本国民であるかぎり、
 神社神道の祭祀儀式を受け入れなければならないこととされた。
→これによって、神社神道が事実上の国教とされた。
→こうして、仏教もキリスト教も、神社神道に従属させられた


●日本の首相が靖国参拝すると、中国や韓国などからの反発を受ける。
A級戦犯分祀しようとしても遺族の反対で実現できない。
→そこで、新たに国立追悼施設を建設するという案が出てくる。
→しかし、かつての日本の戦争と植民地支配についての歴史認識があいまい
→これでは、新たに施設を作っても、政治的に利用され、「第二の靖国」になりかねない。



◆以上、5点ですが、他にもなるほどと思える点が沢山ありました。
・戦死した息子を喜ぶ母たちの対談
プロテスタント教会靖国神社との関係
・首相にもなった石橋湛山さんが、戦後すぐに靖国神社廃止を提言したこと
など、靖国問題を考える上で、この本は、たくさんの情報を提供してくれています。
靖国問題に興味のある方は、是非とも一度読んでみて下さい。
(巻末には、「靖国問題」の解決の方向が提示されています。)