月9が面白すぎる 第8話【辞職】

『大切なことはすべて君が教えてくれた』第8話は、中盤にすごい盛り上がりを見せます。

序盤は、
・修二両親が夏実の両親に謝罪し、
・有悟さんが夏実でなくさやかに花をあげ、
・平岡くんが夏実の母子手帳を目撃してしまいます。
・親から苦情の電話が鳴りやまない。
・そして修二を「依願退職」という形にすることで、騒動を治めようとする学校。


●ここから中盤の3つの連続するシーンが、このドラマが単なる恋愛ドラマでなく、
「人間を描いたドラマ」であることが明確に示してくれます。


1.「解雇」を申し出る修二

学校のお偉い方々のいる前で修二は、きっぱりと言います。
「僕は辞めません。辞めることは責任を取ったことにならない。
 軽蔑されながらでも、生徒のそばにいることを選びたいのです。
 罪は罰せられるべきで、それを周囲に示さないといけない。
 だとしたら、自分から辞めて責任を取ったなんていうきれいごとで済まさないでください。
 僕はそんな体裁よくやめてはいけない。罰を与えるならクビにしてください。」

→真面目な修二は、「責任の取り方」にこだわります。
 「解雇・退職金不要」という厳しい処分を希望するという潔い態度です。
 現実の世界では、こんな風に言える人は少ないでしょう。
 この申し出は結果として、依願退職という形で穏便にすまそうとした学校に対する「挑戦」になりました。
 この場面には、物事をあいまいにしがちな大人社会に対する脚本・安達さんの批判が込められているように感じました。


2.ひかりを元気づける望未
修二が辞めさせられるのは、自分のせいだと自分を責めるひかりが、
いつも明るい望に対して「なんでいつもそんなに明るいの?」と聞きます。

「深刻な顔してたら何かが良くなるの?今の自分には、どうすることもできない。
そういうとき、悲しい顔してたら何かが変わるの?
私は笑ってきた。そしたら何とかなった。だからひかりにも教えてあげたかったの
つらいことはいっぱいある。どうにもならないこともいーーーぱいある。
でもそういうときこそ笑うの。ベタだけど、以外に効果あるよ!」


→ほんと望未は、大人です。いや、大人以上に悟っています。
 世の中どうにもならないことが沢山あることを知っている。
 悲しい顔をしても、どうにかなるものでないことも知っている。
 そんなときは、笑うことにしている。
 これは、大人でもなかなかできることではありません。

 

 望未の言葉は、ひかりだけでなく、周りで聞いていた人にも良い影響を与えます。
「佐伯さん!また明日!」と笑顔であいさつをする児玉くん。
「よっしゃー!部活いくか。俺がおらんと始まらんわ!なっ!」といつもの平岡君が戻ってきます。

 
望未の言葉に対しては、次のような反論があるかもしれません。
「悲しい時は、無理して笑う必要ないのではないか?」
「悲しいなら、悲しい顔をすれば良いのではないか?」と。

→確かに、感情に逆らって無理に表情をつくるのは不自然だと思います。
 望未も、不自然な表情をしろと言っているのではないと思います。
 

 悲しいときは、まず思いっきり悲しめばいい。
 でも、いつまでも悲しみに浸っていては、いけない。
 前に進むのだ。そのためには、悲しみが消えていなくても、
 悲しみをいったん脇に置いて、笑って毎日を過ごして行こう。
 そうすれば、楽しい出来事にも出会う。
 そのうち悲しみは、次第に薄れていくだろう。
 と望未は言いたかったのだと思います。

 
 ちなみに、ここのでひかりは、望未のことを「のんちゃん」と呼んでいます。
 なんか、ホッとしました。
 

3.進路指導を拒む母親に反論する委員長・万理

修二に対して、幻滅していると言う母親に対し、万理(石橋菜津美さん)が言います。
「バカじゃないの?子供が間違うのは知識が無いからだとでも思ってるの?
避妊や病気のことなんか、クラス全員知ってるよ。わかってるよ。
分かってて、でも頭でわかってる通りにできないから悩んだり困ったりするんじゃない。
大人だってそうでしょ?それでいいじゃない。
私たちそういうのを見て、バカだなあとか、
自分はもっとちゃんとやろうとか、いろいろ考えるんだから」

「ダメな大人がいるから私たち先に進めるの。信頼できるダメな大人が。」


「私じゃ手に負えない時がある」と行って母親は教室を出ていきます。


→万理は、いろんな大人を見てきて、物事の核心を見抜き、それを言葉にして表現できる賢い子。
 言葉に表せないしても、高校生にでもなれば、「何が正しくて、何が正しくないか」
 くらいは、頭でわかっているのでしょう。

 大人はつい、
 「子供には、正しい事とは何かを教えてあげねばならない」
 「自分は、子供に対して良い見本であらねばならない」と考えがち。
 (万理の母親もそういう傾向が強いのでしょう)


 それも大切なことですが、大人が子供に対してなすべきことは何でしょうか?
 「間違いをするな」「きちんとやれ」だけではなく、
 「間違いは誰にもある」「間違ったらまず謝り、きちんと責任を取る」
 そういうことを大人自身が行動で示していくことが大切だと思いました。


●このように、個人的には中盤をかなり楽しんでしまったので、
終盤の修二のアパート前、修二と夏実のシーンがかすんでしまった気がしました。


とはいっても、名女優の戸田ちゃんです。
マフラーを修二に返す夏実
「さよなら」という修二に対し、見上げて「さよなら」と返す夏実
その時にアップとなった表情は圧巻。
無表情に近い演技。しかしその中に、悲しみ、後悔などの感情が入り混じってるようでした。



◆第9話【最後の授業】も楽しみです。
一度離れてしまった二人が、元に戻ることはあるのでしょうか?
昨年、日本テレビで放映された曲げられない女(菅野美保さん主演)と同様に、
結婚はしないけど、子供はパパに時々会いに行く。といった結末になるのでしょうか?